餞別に買つてやらうと言ふのにねぎつたのかい?
より だつて、いまいましいぢやありませんか。
磯 アハハハ、相当だよ、お前も。どれ私や残りの品を、まとめてやらうかね……(笑ひながら立つて行く)
より 香代ちやん、はい。これ、私のホンのおこゝろざし。……あら、どうしたの?
香代 ありがたうよ、よりちやん。……済まないけど酒を一杯おくれ。
より 泣いたりして、今更――。
香代 お酒!
より 酒はいいけどさ……(大きいコツプに酒を注いで持つて行つてやつて)おかみさん、又なんか言つて?
香代 うゝん……(酒を一気に呑む)私に済まないつて。
より 今頃になつて? それ位なら、あんたが近藤さんから借りた分を立替へてやつて、それをあんたの前借の中に繰入れて呉れゝば何でも無く済む事ぢや無いの? 本当は、近藤さんがあんたにあんまり御執心なもんで、あんたが此処にゐれば又なんだかんだで、いつなんどき、あんたに取つて代られるかも知れないと思つて、おかみさん安心して居られないからさ。
香代 おかみさんは、あれで、気の良い親切な人だよ。あんな人に煮湯を呑ましたり、私にや出来ない。
より 気は良い人だよ。だけどさ、あ
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