父と、俺んとこのおふくろは、イトコまでは行かねえが、とんかく縁につながつてゐる間柄なら――。
留吉 ……縁につながつてゐても、此の親父の墓ひとつ見て貰はねえからね。
伝七 え、そりや、君、何もそりやお互ひに忙しいから、つい、いつでも来れると思ふから――。
留吉 いや、死んじまつた者が、どうなるもんか。カンヂンな事あ、生きてゐる者の方だ。
伝七 だからさ、だから、二百円で、結構だからよ――。ぢや、えゝい! 利息を、昨日は三分五厘と言つてゐたが、思ひ切つた! 五分迄出さうぢや無えか! 背に腹は代へられねえ、五分の利息と言へば村の貸借にはチヨツと無い率だよ?
津村 ハハハ。ぢや他からでも融通は出来る訳ぢや無えのかい?
伝七 津村先生、あんたあチヨツと黙つてゐて、呉れねえかね! 俺あ真剣なんだぞ。村で持つてゐる学校で、当てがひ扶持貰つて勤めながら、その暇々にシユーセンの口利きをしちや口銭稼ぎに夢中になつてゐる人間なんぞに俺等の辛え気持がわかるかい!
津村 あんだと! 私が、いつ口銭稼ぎに夢中になつた?
伝七 現にやつてゐるで無えか!
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(奥の製板工場の方から、水路に添つて
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