俺んちが分散する時あ、あんたあ知らん顔で見てゐなすつたよ。
伝七 そ、そ、そりや、お前、あゝ言う際に、俺みてえにロクに力の無え人間が飛出して行つても、なんになるだよ。そんな、そんな事を誤解して貰つちや、困るよ!
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(中年の小学教員の津村が表から入つて来る)
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留吉 津村先生、どうでした?
津村 いやねえ、今も行つて来たんだがね、どうも先方でも足元を見て、いろいろの事を言ふでねえ。
伝七 (キヨロキヨロと留吉と津村を見較べてゐたが)あんた今日は学校休みですかい?
津村 今日は日曜だかんね。ハハハ。一週一度の骨休めさ。ハハハ。
伝七 さうかね。ハハハハ、骨休めて、田地のシユーセン歩きかね。ハハハ。
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(津村がムツとして伝七を睨んでゐる)
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留吉 しかし、もともと買つて貰ふ時に、今後いつでも買戻しが利くやうに諒解は附いてゐるですがねえ?
津村 そいつが、当てにならねえでねえ。(眼は伝七の方をみてゐる)
伝七 そりやさうだらう。五六年前とは大分此の村も変つたからなあ。ハハ。こんなに村がヒヘイしちまつて、
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