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留吉 (あくまで下手《したて》に、話題を変へる)なにかね、なんか製材所とかの事で、今ゴタゴタしてゐる――?
利助 いやあ――此処ぢや製板と言つてるけどね。……なあに、別に……。(お前なんぞに話したつて仕方が無いと言つたムツとした調子である。取り附く島が無い。)……何をしてゐやがるんだ、遅いなあ。
留吉 ……お雪の事あ、今後とも、一つよろしく頼むぜ、なあ。なあ、利助さん。
利助 チエ! (舌打ちをして土間を降りる)
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(表からセカセカと入つて来る轟伍策)
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利助 おゝ、轟さん、遅いぢやないか!
轟 だつて先刻も一度来たんだぜ。
利助 今頃になつて、変に気を持たせるのは止して下せえよ。
轟 おかしな事は言ひつこ無しにしようよ。倉川の方が、もうこれ以上待つのはいやだと急に言ひ出したんで、私あ君の頼みもありさ、大急ぎでやつて来たら、君あどつかへ行つて居ない、大概ヂリヂリしたんだよ。
利助 え? もう待てねえつて? そいつは約束が違ふぢやないか!
轟 違つても仕方が無い、さう言つてるんだから。倉川にあいだけの資本を握つて
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