うして掛取りなんかも私、やらして貰つて――。
磯 そりや、辛いだらうさ。お前にばかりこんな事させて、私も済まないと思つてゐますよ。……会社の近藤さんの話にしたつてね、私あ何も兎やかく――。
香代 え? ……(はじめてお磯がからんで来る訳がわかつて、相手の顔をマトモに見る)……それを、お神さん――。
志水 より公、俺にうどんを一つくれよ。
香代 ……あの、これ――(と帯の間から紙幣束を出して、磯の膝の前のバラ銭の中に置く)
磯 なにさ? ふーん、これぢや勘定が合はないよ。誰れの払ひ?
香代 いえ、そりやお神さんの手にあげて置きます。
磯 だからさ、こんな沢山のお金を、どうして――?
香代 近藤さんが無理やりに私に握らしたんですよ。
磯 (顔を上げて香代を見て)……さう?…しかし、そりや結構ぢやないか。
香代 そんな風にお神さんから、言はれるのはいやですよ、私あ。私が近藤さんから金を貰ふ筋合ひは無いぢやありませんか。
磯 そりや、私の知つた事ぢや無いやね。(勘定の分だけの銭を財布に入れて)どれ、私あチヨツト……(土間に降りる)お店を頼んだよ。(客に)ごゆつくり。
より お神さん、どちらへ?
前へ 次へ
全93ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング