ロする)来るなつ! 来るなつ! ついて来ると、しめ殺すぞつ!
香代 (パツと線路の方へ飛出して行き、前に廻つて留吉の肩口をドンと突き)馬鹿! 危いんだよ! (留吉の胸倉を両手で鷲掴みにして、力一杯身体ごと線路の外、柵の方へ引きずつて来て、そのまま胸倉を離さぬ)
留吉 な、な、なにを貴様――! (自分の両手はふところをシツカリおさへてゐるので香代にされるまゝ)
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(間。――間近かに迫つて来る列車の響の中で二人が両手を突張つたまゝ取組んで無言で相対し、互ひに光る眼で見詰め合つてゐる。
急に幕。
とたんに、グワーツ! と通過する列車の轟音)
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[#5字下げ]2 蔦屋[#「2 蔦屋」は中見出し]
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(約半年後の春の宵。蔦屋の店内。奥中央にノレンの下つた入口。土間を広く取つてあつて、下手の部分は細長い食卓が三つばかりと作りつけの腰掛け。上手の一部が二重になつて畳が敷いてある。土間は二重の前を廻り込んで、上手に開いている出入口(奥の室及び裏口へ通ず)へ。下手の長食卓の所で辰造(前出)と、志水(着流しの卅五六才の工夫)が
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