と一服して行かうぜ。
金助 だつて現場ぢや、みんな待つてゐるよ。
辰造 いいつて事よ、どうせ今日も又残業だ。たまには骨休めもさしてやらなきや、たまるもんか。俺達が行くのが遅くなりや、そいだけ休んで居れるんだ。ハハハ、気を利かすなあ、かう言ふ所だ。
金助 しかし監督が又怒鳴るぜ。
辰造 怒鳴らしときやいいぢや無えか。あの野郎、こちとら臨時工夫をまるで人間扱ひにしねえんだからな、ナメた畜生だよ。
金助 だけんど、あの浸水のひどさぢや、責任持つて現場に出てりや、イライラもするよ。あいだけの人間が夜の九時迄働いて、一日にやつとコンクリー流し込みが一尺と進まねえんだからな。
辰造 そんな事俺達が知るか。会社で無理にもあすこにトンネル通さうと言ふんだから、会社の責任だい。(先刻から煙草をくはへて、何度もマツチをすつてゐる)チツ! マツチまでが附きくさらねえ!
金助 (自分のマツチを出して)おいよ、此処にあるぜ(するが附かぬ)こいつも駄目だ。
辰造 一日ビシヨ濡れになつてゐて、そいで煙草も吸へなきや、世話あ無えや。こん畜生! (マツチ箱を丘の方へビユツと投げる。それが香代の肩に当る)
金助 (マツチ
前へ
次へ
全93ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング