なえて、となえるだけならば、なんにもしないことにほとんど等《ひと》しいでしょう。それで私は私流に考えぬいて、私のような貧しい弱い臆病な人間にも実行できる具体的な処方箋をつくりあげました。それはこうです。
私は今後、どこの国のだれが私に武器を持たせてくれても、ていねいにことわって、それを地べたに置くでしょう。武器というのはサーベルから原子兵器にいたるすべての人殺しの道具です。外国人がくれても日本人がくれても、地べたに置いて、使いません。
そうすると、ばあいによっては私は処罰されるかもわかりません。それは怖いし、イヤです。なるべくそういうことにならないように相手にたのみます。しかしどうしても処罰されるのだったら、それを受けます。たぶん、即座に殺されるということはないだろうと思います。いずれにしろ怖いが、しかし武器を取って人を殺すほど怖くはないでしょうから。
暴力=軍事力にたいする私の抵抗は、じつはたったこれだけのことです。もちろん、このことからいろいろ派生してくる問題はありますが、それらみな副次的なことで、右の一つのことさえ私が実行できるならば、その他のことは、そのときどきになんとか
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