定がメチャメチャになったり、役所に役人がいなくなったり、商店がガラアキになったりしても、そんなことはどうでもよいではありませんか。
 人間はどんなに長生きしても、たかだか百歳ぐらいまでしか生きてはいない。あれをして、これをしてから、それをしようなどと思っているうちに死んでしまいます。生きているうちに人は知らなければならぬことがある。味わわなければならぬことがある。その余のことは早く捨ててしまえ。
 それから、できるだけ他を圧迫したり搾取したりしません。ここで圧迫や搾取というのは、哲学的な意味をふくみません。
 ひとつの室内に二人の人間がいれば、たがいに何もしなくても一人が他を圧迫していることになるだの、人が野菜を買って食っていれば、それは農民を搾取していることになるだのといったような、発生してからたかだか三千年ぐらいにしかならぬ「未開な」人間の知恵がうんだ理屈からきたヴォキャブラリイによるのではない。もっと直接的な物理的な圧迫や搾取のことです。それをしないこと。すくなくともできるだけ避けること。これはそれほどむずかしいことではありません。ふつうの真人間には他人を圧迫したり搾取したりする
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