うに、流行小説家の名がズラリと並んでいないと買わないそうで、その並んでいる作品のなかみは比較的どうでもよいそうです。じつにばからしい話でその点では、現にそんな雑誌の編集者自体が、そのような読者を軽蔑しきっています。私などもハッキリ言うとそんな読者を軽蔑します。しかしそのような読者が雑誌を買ってくれないと、販売競争に負けて落伍する。そういう仕事をして食っているのが編集者であり、また、そういう雑誌に原稿を売って食っているのが著作家なのだから、実際上はそんな読者を軽蔑できるだんではないのです。アブラムシに依存しているアリが、アブラムシを軽蔑すると言ってみても意味はない。さしあたりは、それにむかってどうしようもないところの壁のようなものです。
 そんなわけで、私のところに小説を書けとか随筆や評論を書けという注文は、ときどきくるが、戯曲を書けとの注文は、ほとんどきません。こちらから頼めば戯曲をのせてくれる雑誌は一二あるにはありますが、あまりたびたびだと迷惑をかけそうで気やすくは頼めません。
 現在書きかけている作品の発表のあてがないのもそのためです。そして、私はごぞんじのとおり小説や評論は、まれ
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