め、組みたて、対照して、その間の矛盾や撞着のなかから自然に一つの結論をうかびあがらせてくるという方法によってしている。そのかぎりでは冷静公平で科学的な態度のように見える。しかしよく読んでみると、彼はこれまでのアメリカ政府や国連がわの発表が全部的に根本的に虚偽ではないかとの疑い、または確信から出発して、演繹《えんえき》的に、それを証明するために公文書や新聞報道をえらびだしたり組みあわせたりしていることがわかる。しかも、そのような疑い、または確信を、彼がどこからどういう理由で抱きはじめたかについては、まったく触れていないのである。
彼はまえもって、われわれに語りかける以前に何かの理由でアメリカ政府当局、または、南鮮政府の有罪の事実を知っているか、または強く疑っていたらしく思われる。その何かの理由というのは、ハッキリした具体的事実ではなくて(なぜなら、そのような具体的事実を彼が知っていたのならば、この本の性質上、それをこの本のなかに書かないほど彼は愚かでないだろうから)、彼の持っているイデオロギイからきた観念的な疑惑であり、そしてそれだけだったらしい。つまり、彼は左翼的政治思想をもっていて
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