ときには、もっとも効率の高い手段であったからである。もっとも有効な戦術であったからである。だからあるとき、あるばあいに、マルクシスト共産主義者が、どんなに熱心に誠実に平和のために動いたとしても、客観的情勢が彼にそのことを命じれば、びっくりするような早さと淡白さで平和を捨てて戦争を取りあげるであろう。
 そのことは、この二三十年間の世界の諸事件のなかでの共産主義者たちの動きのなかに、飽きるほど示されています。もちろん日本の共産主義者たちの姿のなかにも、ある程度まで示されています。それを今ここで非難しようというのではありません。そういうものが共産主義者であると私が思っていると言っているまでです。
 そして、あなたは、前記のとおり、マルクシストまたはマルクシズムをある程度まで採用なさっている人のように私に見えます。そして、そのあなたはじつに熱烈に平和論・戦争反対論・再軍備反対論を展開なさっている。ただ単に一時的戦術として見ることが困難なくらいに、あなたは本気なように見える。もしそうだとすると、そのことと、あなたの抱いていられるマルクシズム理論との関係は、どんなふうになつているのでしょう? そ
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