義を称している国や勢力は、悪をはたらくことは絶対にありえないと、信じているもののように見えました。それほどまでに、共産主義や社会主義を絶対的に、ちょうど金ののべ棒をウノミにしたように呑みこんで信じきり、少しの不自由も不満も感じない状態というものはさしあたり、いかんともすべからざるものであり、軽蔑よりも、羨望を感じさせる種類の状態であります。しかしそれは、真実だとか正義だとか人間平等だとか寛容とか科学とかが打ちたてられなければならぬところでは、役にたたないばかりでなく、有害なものであります。
 あなたにききたいのは、あなたもまたそういうインテリゲンチャの一人ではないか? そうではないかとご自分で考えられたことはないだろうかということです。一言にいいますと、アメリカのような資本主義国と、共産主義や社会主義を称している国とが紛争を起したばあいは、あなたにとっては、調査や検討や論議以前に、絶対無条件に、有罪なのは資本主義国ではないのかということです。
 私のつぎの質問は、そのこととつながりのあることであります。
 私は社会学や経済学について、専門的に高度の学問をしたことはありません。しかし初歩
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