半分われに帰りかけて、ベソをかいて泣きそうにするが、またボンヤリしてしまう)
お妙 芋? そう、明日になれば芋、食べさせてよ。だから、いまごろ寝呆けては駄目よ、吉坊。さ、早く寝て、明日はまた小父さんの畑の加勢すっだよ。(と吉坊の手を引いて納戸へ連れて行く。声)まあ、みんな何て格好をして寝るのだろう。さ……(やがて出てくる)ホホホ、おかしいねえ咲ちゃ、吉坊が又寝呆けてさ、ホホホ、ねえ、……(と一人ごとをいっている間に、今度はどうにもこうにも辛く悲しくなってしまい、手離しでしゃくり上げる……)
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(戸を叩く音)
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声 嬢様! 嬢様! おらだ、開けて下せえ。嬢様!
お妙 (それがやっと耳に入り、チョッと立って聞いていたのち、誰だということがわかり、イソイソして土間に降りて、くぐり戸の閂をはずす)……段六さん?
段六 へい、馬鹿におそくなってしもうて、これは済みましねえ。(と百姓段六入ってくる。野良姿で、長柄の鍬とオウコを肩にかついでいて、オウコの先には片モッコを釣って、その中にフロシキ包みが二つばかり入っている)ああにね、麦畑の方は小僧どもと一緒
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