に来り投じたのだ。
仙太 え、百姓が※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
加多 そうだ。その上に常・野・総三国にわたって動こうという博徒無頼、バクチ打ちだな、これが二十人近くはある。これは何の故だ? また、何のためだ? 現にあの甚伍な、あれがその雄なるものだ。
仙太 そ、そ、その、実あ、私がこの金を持って行こうというのは、その甚伍左の旦那の留守宅だ。
加多 見ろ、甚伍左は、他の一切の事を忘れているのだ。家や村を顧みる暇がないのだ。
仙太 旦那あいまどこにいらっしゃるんで?
加多 それは拙者も知らぬ。あるいはどこかの野末か軒下で斬られて死んでいるかも知れぬ。
今井 加多さん、玉造の諸兄は予定通り敢行したらしいですなあ、ご覧なさい!(空の火明りは急速に赤くなり、その反映が三人の顔に赤く映るぐらいになる)
仙太 おお! ありゃ真壁の町だ!
加多 われらと同憂の士が、玉造の百姓とともに打って出て、永らくわれらに耳を貸そうとしない横道の物持ち、米|商人《あきんど》、質屋、支配所、陣屋などを焼くのだ。……綺麗だなあ!
今井 天狗組最初の狼火だ! 日本国を焼き浄めるための、あれは、第一の火の手だっ!

前へ 次へ
全260ページ中82ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング