って、仕方あ、ありはしねえ、桝一升にゃ一升しきゃ入らねえ、俺あ俺だけの了見で俺のしたいことをするまでだし、あんた方あ、あんた方で天下を取るなり千万人を助けてくれるなりしてくだせえ。まあ、見物していやしょう。俺あ自分の手に合うことがあれば駆け出して行くまでの話だ。へい左様なら。
加多 ……そうか! うむ。仙太郎!
仙太 なんだ……?
加多 長い短いをクダクダとはいわぬ。手に合うことがあれば駆け出して行くというのは、定だな。
仙太 あたりめえだ。
加多 それならば、五月にこの筑波にもう一度登って来い!
仙太 おっと、そこまではいいっこなし。恐れながらと俺が江戸の奉行所へ突走ればどうしなさるのだ?
加多 ハハ、いうな。貴様がイコジになって嫌がらせをいくらいったとて、拙者は聞かぬぞ。考えて見ろ。即今の時勢は士であれ町人であれ百姓であれ、天下に志と意気ある者の合力を命じて居る。一人づつの力と策を一つづつ燃え上らせてその場限りの欝を散じる事ならば、中世の遊侠の徒でさえもやった。また、それが果して何のたし[#「たし」に傍点]になった? どうだ? (仙太郎、黙って返事をせぬ)……個人の力をため、控え、
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