まくは加々見様御支配領内百姓一統、引いては近隣御領地内百姓衆皆様のうえを思うて、少しでも善かれと思うていたしましたことでええす。皆様お百姓衆とお見受けいたします。ここのところをお考え下せえまして、どうぞ御助けを! へい! この通りでごぜまする! お願え……。
[#ここから2字下げ]
(迫って来る仙太の気持と言葉の鋭さに、殆ど縛られたようになって、進んで筆を取ろうと言う者もなければ、立去りもかねている見物の百姓達)
[#ここで字下げ終わり]
鳥追 ……まあねえ、お気の毒な……。
仙太 へい、いいえ、気の毒なのは私だけではありましねえで。百姓一統でええす。百姓一統、誰彼なしに気の毒でええす。今日人のこと、明日わがこと、同じでえす。そこん所ご勘考下すって、どうぞお願い申しまする!
段六 お願いでごぜます!
[#ここから2字下げ]
(それでも動こうとする百姓はいない……)
[#ここで字下げ終わり]
声 (土手向うの仕置場の方から響く)ええい、出ませい! 御検分! 控え方! よろしうござり申すか? 出ませい! (その鋭い声につれて、物音が起り、同時にすでに以前から河原矢来外に見物に集って、それま
前へ
次へ
全260ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング