うぞいたしましてご容赦いただけるように、皆様の御合力御願い申しまする。へい! 真壁の仙太郎兄弟一生涯恩に着まするでごぜます! 犬の真似をしろとおっしゃれば犬の真似いたしまするでごぜます! どうぞ皆様のお名前と爪判《つめばん》だけいただかして下せませ。足をなめろとおっしゃればなめますでごぜます!
段六 ……仙太よ、まあさ……。
百姓二 ……かわいそうになあ。しかし後が怖えからなあ。
百姓三 ……そうさ。後のタタリがなあ。
仙太 後のことは私一身に引受けてご迷惑は決して掛けねえ積りでえす。お願えで!
[#ここから2字下げ]
(百姓達、仙太の血相に気押されてジリジリ後に退る)。
[#ここで字下げ終わり]
百姓一 ……積りはその積りでもなあ。
仙太 (涙と汗と砂ぼこりによごれた顔を初めて上げて皆を見渡して)……皆様もやっぱりお百姓衆とお見受け申しまする。御支配こそ違え、私も百姓でごぜます。兄仙右衛門も百姓でごぜます。百姓の心持ちを知っていただけまするのは百姓|御一統《ごいっとう》ばかりでごぜます。兄がお上様に向い不都合の事いたしましたのは、自分一人のためを思うていたしたことでありましねえで。せ
前へ
次へ
全260ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング