(水田からは何の返事もない。抜刀の男、ズカズカ進んで田に踏み込んで行きそうにする)
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袴の男 (動いている菅笠を認めて、指し)百姓だ。
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(それで抜刀の男は踏み込むのをやめる。三人、三方を見廻している。――間)
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袴 ……(水田へ向って)……おい……(と呼びかけながら着流しの男の抜刀に眼をやり、それをかくせと頤をしゃくる。着流しの男、抜刀を背後にかくす。(水田へ向って)……おい、こら! なぜ返事をしない、聞こえないのか? (稲田の中の者達は、稲の間から三人を覗いて見ておびえでもしたのか立上ろうとはしない。が泥掻きをする手を止めたらしく、稲も動かないし、水音もしなくなる)……おい!
着流 ハハ、恐ろしがっているんだ。
袴 そうか。馬鹿な、元来我輩等はお前達の唯一の味方なんだぞ、お前達になり代って藩閥政府の専横をぶち倒そうというのだ。恐がると言うのは聞こえない話だぞ。ハハ。しかしまあ、それでもよい、話は出来る。少したずねたいことがあるが、正直に答えてくれよ。ほかでもないが、この辺に仙太郎さんという百姓が、住んでいる筈だが
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