いて来る陣太鼓の音。
暫くして、右手から出てくる加多源次郎。敗走軍の惨苦が一目で見られる姿――硝煙によごれ、所々破れたり血痕のある小具足に足だけに雪ぐつ。身内にどこか傷を負っているらしく青ざめて足どりもシッカリしていない。中央近くまで来て立止り、足元の雪を一掴みしゃくってガブリと口に含み、ウムと唸声みたような声を一つ出してから、手に持っていた陣刀を雪中に突いて、それに両手でよりかかるようにして黙って前の方を見ている。
奥のはるかな、谷の辺から弱く尾を引いてオーイと何かを呼んでいる声。
加多の出て来たところから、つづいて水木(前出)が抜刀を下げたなり、背後を振返りながら出て来る。これも加多に似たような身なりだが、傷は負っていないらしく比較的元気である。左手に鷲掴みにした二三個のサツマ芋を生のままがりがりかじりながら、しきりにうしろ――右手奥を気にしつつ加多に近づく。
[#ここで字下げ終わり]
水木 ……加多、これを食え。
加多 食いたくない。
水木 嘘をつけ、そんな筈が。(ムシャムシャ噛む)ああ、うまい。……フフフフ、残念ながら、うまい。さあ……。
加多 ……拙者の隊では、士分以
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