いで駆け抜けろ!
仙太 水田に踏み込まぬよう用心するんだ!
甚伍 よし! 妙、さらばだ。さ、一緒にトキを!
加多 よし、おおおっ! (抜刀を差上げる。それにつれて七人が一緒に抜刀、おおおっ! と喚声をあげる。家のこわれる響と火事の音とに混って、その辺に鳴りひびく)
仙太 お妙さん! (パッと駆け抜けて戸外へ飛び出して行く。つづいて五人、最後に加多がそれを追って走り出て行く)
お妙 仙太郎さあん! (戸外へ)[#地付き](幕)
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9 越前、木芽峠
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十二月。深い積雲の山間の曇った昼さがり。幕軍の包囲を衝いて湊を逃れ出でた末、京都に上り慶喜について陳情せんと、途々諸藩の兵と戦いながら中仙道を一旦美濃に出で、ついで北陸に道を転じてここまで来た天狗党の残党約八百人が、すでに十日ほども屯集している山中。
その本営から少し離れた台地。ここは山の風蔭になっていると見えて積雪はさまで深くない。左奥は暗い断崖に終っている。右手に谷より登って来る小道。正面奥は谷に開け、その空を一杯に鉢伏山の姿がふさいでいる。
誰も見えず、静かだ。離れた本営の方からドードードーと響
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