戸口から出て行く)
お蔦 さ、お妙さん、奥へ行って休みましょうね。
お妙 あい。いいえ、それ程のことではありません。クラクラとして田の中に手を突いただけなのです。
お蔦 それでも、寝ていないと段さんが怒りますよ。
お妙 ありがとう。……ホンに、段さんは、よくしてくれます。
お蔦 あんな人もいるし。……仙さんのような人もいる。……あなたのお父っあんのような気の強い人もいる。……あれ、髪がそれじゃ、休む前にチョイとまとめてあげましょう。(お妙の髪に手をかける)どれ、いい髪だねえ。
お妙 すみません。……お蔦さん、あのう、天狗の話何か聞きませんかえ? 何でもこれから皆で横浜の方へ攻め込んで異人打払いの一番がけをやるとか……?
お蔦 さあねえ。……仙さんは何もそんな話はしないし。そりゃ噂だけでしょう、だって四、五日前から天狗は水戸の方へ走って行くばかりだというじゃありませんか。
お妙 宍戸の松平の殿様が水戸様の御|目代《もくだい》で湊の方へお乗出しだといいます。それに加勢に行くのかしら。……あのう、仙太郎さんは、どこへ?
お蔦 上郷村とかの寄場の人達があの人を慕ってすぐそこへ来ているそうで、そ
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