#ここで字下げ終わり]
お蔦 ここでいわれては困るというのかえ。お嬢さんは段六さんと子供衆と一緒に田の草取りだ、聞いちゃいないから安心おし。……ふん、面白くもありゃしない。
仙太 ……面白くなけりゃ江戸へ帰りな。
お蔦 すぐ、そうだ。そりゃ、あたしゃお前から、ついて来いともいわれないのに、デレリとしてこんな常陸くんだりまでついて来た。うるさいことだろうよ。……お前さんはお妙さんてえ人に惚れているのだ。
仙太 ……。(寝ている手がビクリとして、何か言うかと思うと黙っている)
お蔦 ……お妙さんもお前に惚れている。……昨日今日のことじゃない。……段六っあんがそういったよ。いわれなくたって私にゃ初手からチャンとわかっていらあ。……こういうと私がお妙さんを怨んで妬いているように取れるかも知れないが、そうじゃない。お嬢さんは生娘でオボコのあんな可愛い人だ、大方ご自分がお前さんに心《しん》から惚れているということに自分でも気がつかずにいるだろうよ。あの人を見ていると、もったいないような、いじらしいような気がして、私まで惚れちまいそうだ。……因果だねえ。
[#ここから3字下げ]
(仙太返事なし。……
前へ 次へ
全260ページ中192ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング