うだっ! (叫ぶのと一緒、片膝立ての居合いの体勢でパッと大刀を抜き、抜き打ちに兵藤に斬りつけると見せて、腰をひねったと思うと、一間ばかり離れて中腰でいる吉村へ斬り込む。吉村不意を打たれて、トッサに刀のツカでガッと受けは受けても、どこかを少しかすられたらしい)
吉村 (パッパッパッと六、七歩右奥へ畳を飛びさがって抜刀)卑怯っ!
井上 卑怯は貴様だ! 侫漢め、覚悟っ!
兵藤 (井上は自分に向って斬ってかかったもので、それを吉村が防いでくれたのだと思い)頼んだ! 危ない、甚伍左! (と縁側を飛降りてくぐり戸から外へ走り出て行く)
吉村 (ジリッと平正眼に構えながら)それでは、初めからその積りで……? 筑波の命を受けてか……?
井上 言うなっ! 勿論だ! お為《ため》派奸党のふところ刀などと、ことごとにわが筑波正義党へ向って小策を弄し、あまつさえ、薩長にまで手を伸す犬め、許す訳には行かんのだ。おおっ! (と、おめいて踏込んで行こうとする)
吉村 ようし、それなれば……(と、刀をスーッと上げて八相上段に構えなおす。が、其の天井が少し低いのを見て取って、片八相、斜上段になる。人物技量ともに井上とは
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