するのだ?
兵藤 それならたずねたい。いま、貴公のいったことは、水戸全藩とは敢えていわぬが、筑波の藤田氏田丸氏以下全隊士の意見か? つまり筑波党を代表されてのお考えか? それとも貴公一個の?
井上 代表だといつ申した? ……しかしながらわれわれは誰やらと違って邦家百年の計のためにともに身命をなげ打って結束した者だ。一人々々てんでの考えでは動いておらぬことは申しておこう。
兵藤 フーム、そうか。……よし、それではそれに答える前にもう一つ聞きたいことがあるが、……貴公、本月五日京都池田屋における変の事はご承知か?
井上 知っている。それが何としたのだ?
兵藤 それでは、よろしい! いってしまおう。長州表より次第に進発した軍が、いよいよ事容れられずんば、おそくとも本月末、京都を包囲して天下の軍を敵に廻す計画のあることを知っていられるか?
井上 知らぬ。……それが?
兵藤 それが如何なる考えで行なわれることか察しられぬか?
井上 フン。拙藩との口約を果すためと言いたいのだろう。が、それよ。それこそ、貴公先刻いわれた「おれの藩が」の雄なるものでなければ幸いというもの。そんなことよりも、それなれば
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