も知れんが、敢えて申せば、貴藩の去年から今年来のやり口、引いては単独での数回の打払い願い上書の如き、それだ! 如何!
井上 なにっ! そ、それでは貴藩はどうだ?
兵藤 拙藩にもそれがないとはいわぬ。いくらかあろう。しかしながら大局より見て、長州は貴藩ほど功をあせってはおらぬ。ま、下におられい。聞くだけは聞いてからでもおそくはない。なぜ、拙者がかかることが言えるかと申せば、出身が長州とは申しながら、拙者のいたしていること、いっていることは一国一藩の休戚のことでないと自ら信じているからだ。
井上 フン、フフ……。
兵藤 な、何をあざ笑われるのだ!
井上 おかしければ笑う!
兵藤 おかしいとは何がおかしい? 無礼……。
吉村 兵藤氏、君までか? ハハ、まあよいて。
甚伍 全く。もう、論の方はそれくらいになすって……。
兵藤 いや、ハッキリさせておかねばならぬこともある! 貴公、何がおかしいのだ?
井上 調法なものよ、口というものは! 何とでもいえる。フフ。
兵藤 それでは、拙者が腹にもないことをいっているというのか? それを聞こう。何がどうなのか聞きたい。いわぬか?
井上 そうか、それが聞き
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