太 斬ると言ったら斬ります。しかし加多さん、俺あその、甚伍左の親方あ、ご免ですぜ。
加多 それはならぬ! 恩は恩、義は義だ。
仙太 恩のことじゃねえ、親方がそんなことをなさる筈はねえ、何か行き違いができているんだ。
加多 どちらにしろ、井上君の命令通りにやれ。お為《ため》派の策士等と薩州あたりの牒者をスッカリ斬ってしまわぬうちは、ここへは帰ってくるな!
井上 じゃ、急いで行こう。仕度は?
仙太 これでいい。じゃこれはいただいときます。
水木 無くなれば、そう言ってよこせよ。しかし、なるだけ、それの無くならぬ間に、手早くやれ。
仙太 では、加多さん……。(すでに先に立って歩き始めている井上の後に従って、花道へ。立止って懐から位牌を出してチョッと見ていた後、それをポイと後に捨てて歩き出す。が直ぐ何と思ったのか、スタスタ引返して位牌を拾って再び懐中にして……)
井上 どうしたんだ?
仙太 いえ何でもねえ。急ぎやしょう。(二人揚幕へ消える。それを見送っている加多と水木)
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水木 あれにやれるかな?
加多 え? ああ、それなら大丈夫。拙者は
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