リ後へ退りながら)斬って下すっても、ようござんす。
加多 フフフ、斬ってもよいが、俺は斬らぬ……。もう一つ訊ねるが、ここに命を投げ出して投じたのなら、俺達のすることを黙って信じて、今日の使命に出かけるわけには行かぬかな?
仙太 ……へい……。
加多 どうだ? ……本組の隊士は何びとと雖も、本組の大義について、また本組の行動について、勝手な臆測、論判、上下するを許さぬ。これは承知か?
仙太 へい……。
加多 要は尊攘の大|旆《はい》の下に、世情一新のための急先鋒となれば足りる。……(突然裂くようにはげしい声をあげて)事の成る、成らぬをソロバンで、はじいた上で、かかることが行われると思うかっ! たわけっ!
仙太 (殆ど威圧されて)……へいっ!
加多 (短い間。……再び静かな句調)……どうだ、仙太? それでも行けぬとあれば、仕方が無い、お前、山を下って脱走しろ。とめはせぬ。
水木 いや、それはいかん。軍律に依って、こんな……。
加多 今日限り山を下れ。
仙太 ……加多さん、行きやしょう。
加多 江戸へか?
仙太 へい。
水木 そうか! よし、行ってくれ。しかし、手加減をすると承知せんぞ!
仙
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