ろうとはしなさらねえ。俺あ方々でこうして随分人も斬ったし、……どんなことでもやった。どんなことでもねえ。へい。……いまの話だっても、無理に行かねえとはいっていねえ。しかし、それというのも、少しでもいいから民百姓によく響けと思えばこそのことだ。
加多 そのことを我々が忘れていると申すのか?
仙太 いえ、そうはいわねえ。いわねえが、この調子で内輪喧嘩ばかりで日を暮しておれば、先に行ってどうか知らねえが、あんた方のおつもりが下々に響く頃が来れば、かんじんの百姓は一人残らず消えて無くなっていやしねえかと思うんです。
加多 (ひどく静かに)よろしい、お前のいうことはよく解った。では聞くが、仙太、お前は最初ここに来た際に、本隊の志の存するところ、われわれの大義の根本に充分理解がいって参加したのだな? それを承知の上で生命を投げ出すという誓約の上で参加したな?
仙太 へい。
加多 それから、一旦加盟した上からは、上長の命令に背いた場合、隊士としての面目を汚した場合、斬られて死んでも不都合無いと……?
仙太 (加多の静かなのは、いまにもズバッと抜刀して斬りつける前ぶれであることを知っているので、ジリジ
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