考えてえことがあるから。
加多 いって見ろというのだ、それを。聞こう、筋の通った話ならば、われわれも考えて見よう、無駄にはすまい。
仙太 いいえ、筋の通ったなんぞと、そんな訳のもんじゃねえ。ただねえ、ここの挙兵以来、ズーッとやって来たこと、こんなことばかりしていてよいと、お前さん方、思っていなさるかねえ? こないだからたずねようたずねようと思っていたが折が無かった。……俺あもともとこんな百姓上りのバクチ打ちで、皆さん方の理屈はロクスッポわかりゃしねえ、けど、五分の魂があればその五分だけのもので考えるんだ。ま、待ってくだせえ水木先生、いえね、俺だとてこんなふうなことてえもんが、将棋を差すんじゃあるめえし、これがこうなればこうなると、そう思った通り右から左に運べるもんだとは、まさか思ってやしねえ。しかし、あり様《よう》いってしまえば、こねえだからお前さん方のしていることは何から何まで、書生派がどうの江戸藩邸の実権を誰が握ったのと、水戸の藩内の内輪喧嘩だけじゃありませんかねえ? 待った、ま、待って! 口が過ぎたらあやまる! 早い話が、あんた方あ、あをのいてばかりいなさる。百姓やなんぞを見てや
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