と斬れぬ。いって見れば、それで初めて本式な凄味がついてくるとでもいうか。……仙太郎、これからすぐ江戸へ行くのだ!
水木 重大な使命であるによって、その積りで! 万事、井上君に聞けばわかる。少し荷が勝つかも知れぬが、遊隊第一人のお前だ。どうかしっかりやってくれよ。
仙太 また、やるのか? ……へい。
加多 為終せれば殊勲だぞ。その当の吉村軍之進といったな、井上? たしか、小野派一刀流切り紙以上、なお、甲源流に少しいた、それに小太刀をよくするそうだ。朝比奈などの蔭にかくれて懐刀などといわれている小策士らしい、如何にもな、小太刀とは。どっちにしろ、そこら辺の藩兵づれとは違う。あなどるとおくれを取るぞ! よいか仙太。
水木 事は迫っている。早いところを頼む。それに、利根の甚伍左、吉村と一緒におるか、おらなくとも、場合により斬ってよい。いや、あんな奴は斬ってしまったがよい! なお、長州の兵藤もともにおるかも知れんが、これもやれればやって大事ない。万事、井上と相談してやれ。半分でも成功すれば、その日より、お前も士分以上の扱いは、約束して置く。なお、当座のかかりに、これを。(金包みを出す)
井上 打
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