公。ハハハハよく来た。
段六 俺あ、此処までくるんで、おとろしくって、おとろしくって!
仙太 お前がこんなところにノコノコくるのからして酔興だぞ。どうだ、お妙さん達者かえ?
段六 お前、戦に出かけるのではねえのか? あれについて行かなくてもええか?
仙太 うん、いや、俺あこれから、呼ばれているんでお山へ行くんだ。
段六 そんでも、その刀……。ひっこめてくんな、仙太公。
仙太 これか、そうか。よしよし、(抜身を鞘に納める)
段六 そっちの奴は、それはあんだい?
仙太 これか、これは砥石よ。
段六 砥石だと? 砥石を何にすっだい?
仙太 刀を磨ぐのよ。刀あすぐに斬れなくなっからな、磨いじゃ斬り磨いじゃ斬りするのよ。
投六 人をかえ? ……ウーン。
仙太 お妙さん、子供達、丈夫でいるのか?
段六 (初めてわれに返ったように)……ウム。何がむごいというたとて、仙太公、お前ほどむごい男はいねえぞよ。こうしてやって来た俺を掴まえて、しょっぱなにいうことが。お妙さま丈夫か? いくら、お前、嬢さまに惚れているからというても、そいつは、むげえというもんだぞ! 俺だとて、お妙さんのこと、優しい綺麗ないじら
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