しい嬢さまだとは思うている、思うていればこそ、お前のことづけた金を持ってってやって以来、ズーッと植木にいて面倒見て来たがそんでも、俺あ惚れているのとは違うぞ! 見損っては貰うめえ。いくら何でも――。
仙太 アハハ、俺が悪かった。じゃ、どういえばいいのだ、段六公?
段六 どうもこうもねえ、お前こんねえに物騒なところにいるのは止めて、真壁へでも植木へでも帰るべえ。戦争なんぞ、してえ人に任せておけばよいのだ。
仙太 そいつはできねえ相談だ。
段六 できねえと? フン。……おお、いいや、帰るも帰ることだが、早く逃げろ、逃げてくれろ。いまに長五郎とやらのバクチ打ちが、命を取りにやってくるぞ。
仙太 長五郎が? くらやみがかえ?
段六 シラを切ろうとしても駄目の皮だ。俺にことづけたあの時の金は、バクチ場を荒して取った金だろうが? さ、どうだ! いいや、いいや、俺あもう知っているのだ。そのときに、お前、滝次郎てえ親分ば斬ったろう? その滝次郎の息子を負うて、仇討ちをするんじゃと言うて、その長五郎という恐ろしい奴がお妙さんの内へ来よったのだ。
仙太 フーム。……そうか。
段六 お前という男は、何とまあ
前へ 次へ
全260ページ中142ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング