しになることだけ……。
歩哨 それは係りの方の前でお願いして見ろ。もう近い。それ、これが第一屯所だ!
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(いわれて初めて男二人は前を見て、物々しい柵と二人の士を認めて、へへえっ、といったなり、ヨタヨタ、七三の所に坐り込んでしまい柵門の方へ向って土下座)
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歩哨 また、坐り込んでしまう! 手数のかかる奴等だ、立て。こらっ!
隊一 おい、あまり手荒なことはするな。何だ?
歩哨 おお、いえ、四月初めにお呼出しを受けた物持|分限者《ぶげんしゃ》の中で、これまで出頭しなかった者で。沼田まできてウロウロしていたので連れて参りました。さ、歩べ! (と二人を押しやるようにして本舞台へ連れて行く)
隊一 フン、そうか。怪しからん奴等だ。どこの者で何と申す?
男一 ど、どうぞ、お助けなすって。お願い……。
隊二 じゃから、何という者か? どこだ?
男一 か、か、川尻で中山忠蔵と申しまする。
隊一 おお、貴様が川尻の郷士忠蔵か。百姓どもをはたいて大分、ため込んだというなあ。米倉だけで十何戸前だとか。たしか、本隊から玄米百俵だけ徴収、借受けるよう達してあった筈だが
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