、持って来たのか?
男一 はい、百俵なんど、私などのところに、一度に、それ程はございませんで、こ、こんど三十俵だけ馬につけて参じまして麓まで、へい。あとあとは、また、あとあとで、たしかに……。
隊一 よかろう。
男一 へい? そ、それではここで戻りましても……?
隊二 馬鹿、山上へ行くのだ。あまく見るなよ、忠蔵とやら。貴様からはたき抜かれた百姓の子供やなんぞが、この山には大分いるぞ。しかも、いまごろまで呼出しを延引したこともあり、かたがた、そのチョンマゲが、その胴についているものやらいないものやら、保証は出来ぬ。此処ではわからぬ、山へ行けっ!
男一 へええっ!
隊一 (歩哨に)この者は?
歩哨 下妻の物持で戸山それがし――。
隊一 おお、長兵衛という奴だ。そうか貴様が戸山長兵衛か黄金二百両、そうだったな? 帳面を見るまでもない、佐藤先生のいっておられたのを憶えている。持参したのか?
男二 へ、へ、へい、持って参りました。しかし、そ、それが、ああた、二百両と一口に仰せられても、当今、……そんな訳で、五十金だけ、やっと、それもかき集めて参りましたため小判小つぶ取りまぜての……へい。
隊一 
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