見ろ、あやめ踊り今様っ!」……で踊り出したらしい。
歌声。他に三四人がそれに和す。沢山の手拍子の響。
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――高麗のあたりの瓜作り、(ヨイショッと多数の掛け声)
瓜をば人に取られじと
もる夜あまたになりぬれば(ヨイショッ!)
瓜を枕に眠りけり――
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歌声とともに興にのって、屯所の方より舞台へ踊り出してくる隊士一――前出――と隊士二。隊士二は小具足の上に白革の陣羽織を着て、刀を抜いてひらめかしながら。隊士一は『尊王』と書いた陣旗を持って、打振りかざしつつ。心地よく昂奮して歌いつつでたらめな乱舞を舞台一杯に。屯所の方より掛け声と手拍子と笑声。
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――大和島根の民草の(ヨイショッ!)
ここに男児と生れなば
花の吹雪の下蔭に(ヨイショッ!)
大君の為われ死なん――
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(その歌と踊りが、まだ終らぬのに、揚幕の方で怒声)
声 こらっ! 早く歩べえっ! 歩ばんかっ!
隊一 (惰性で踊りながら)おお、何だ? (二人花道の方を見る。揚幕より、うしろから突き転ばされるようにして来る二人の男。後より天狗党の歩哨、これは
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