、抜刀隊と遊隊の一部で焼打ち、軍資狩りに行ったんですが、藩兵が多少出てきて抵抗、相当苦戦らしい。戻りに四五人叩っ斬って来るつもりです!
早田 よし、しっかりやろう、お互いに! ウム! (と二人手を取合いシッカリ握り合って、そのまま遊五は揚幕の方へ、早田は本舞台へ、走り別れる。早田、柵門内へいきなり走り込んで行きかけるが、チョイと立ち停って右奥屯所の方へ向って)水戸、岡田先生よりの使い早田隼人通るぞっ! (それに応じて屯所の方でのガヤガヤ言っている声の中に誰かが「おお早田、ご苦労! 早く通られえ!」と怒鳴る声が聞える。早田は柵門を通って奥への道を一散に走って消える。舞台空虚。……屯所の方では酒でも出されているらしく、笑声、叫声、拍手などの騒がしい音。中に、「剣舞だっ!」「よせよせっ!」「俺が、あやめ踊りをやるぞっ!」「よせ、ドン百姓っ!」「ドン百姓たあ何だっ! 百姓も士もねえぞっ! クソッ、同じように天狗隊の隊士だぞっ!」「ヒヤヒヤ! そこが百姓だっ!」「チェストオウッ!」等の声が聞きとれる。少し酔った声で隊士一が怒鳴る声……「剣舞なんど無粋なもの止せっ! 軍の門出に俺が踊って見せる!
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