め終って、揚幕の方へ駈け出しかける。そこへ揚幕からタタッと走り出してくる男。行商人と飛脚の合の子みたいな装いをして息せき切っている)
遊五 だ、誰だっ! (認めて)おお、あんたは水戸へ行った早田さんじゃありませんかっ! 藩の方はどうでした?
早田 佐分利君か! いやあっちも面白くなって来たぞ、奸党諸生組の朝比奈、佐藤、市川以下が正義党のことをお上《かみ》に讒訴するために江戸本邸に去って以来、水戸は正義党の天下だ。気勢が挙っているぞ。然し、お上《かみ》は例の通り煮え切らないでいるし、奸党には幕府がついている。所詮は幕府の尻押しで正義党を押えにかかるは必条、焦眉に迫っている。すでに時日の問題だ。武田先生、岡田先生以下の諸氏も共に起たれるぞっ! 僕は岡田先生の使いで来たのだっ! 水木、加多、その他の先輩は山上か? 屯所は? 本隊は?
遊五 そうです。それは痛快だ! 三木さんが第一屯所にきていられるが、寄らないでドンドン行ってくれ。本隊のことはよく知らんが、何でも玄勇隊はすでに日光を進出したらしい。じゃ後刻!
早田 そうか。君は、これから?
遊五 結城の方角へ一っ走り、本拠よりの伝令です。いや
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