してえもんだ。
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(隊士一が小走りに崖の方の路を降って来て門から出てくる)
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遊二 敵がいさえすれば門前町は大八楼で射ちてえところだろうて? ご愁傷さまみてえだ。
遊一 何を、野郎、またいうか!
隊一 おいおい、またやっとるな。ハハハ。門前町の女どもは少し戻ってきたらしいぞ。あんまり戦《いくさ》が暇でノンビリしているんで、安心しやがったらしい。何しろ寝起きのまま逃げ出した奴が裏山伝いに長襦袢のままのご帰還だ。女体からご本尊の神さんがご出御だと、見張の者がビックラしたとよ、ハハハハ。
遊一 ああ、三木さん。お使いですかね?
隊一 門前町に敵を打ちに行くなら今のうちだぞ。間もなく忙しくなるかも知れんからな。
遊二 そいじゃ、いよいよ、大きな軍《いくさ》が……。
隊一 うん、始まるかも知れん。相手は常野十二藩の連合軍だぞ。幕府が命令をくだしおった。ワッハハ、ふんどしを、シッカリしめておけよ。染川氏は屯所の方だね? (遊二のうなずくのを見て右手へ急いで去る)
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(間。……遊一と遊二が互いにマジマジ顔を見合っている)
(今去って
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