行った隊士が、屯所へ行って、いきなり何か煽動的なことを言ったらしく、右手少し離れたところで多人数がワーッと喊声をあげる)
[#ここで字下げ終わり]
遊一 ……ムッ! いよいよ始まるぞっ!
遊二 ああに、見ろ、十二藩の連合軍が何だっ! 今にぶっくじいてくれら! 絞れば絞るほど出るだなんて俺達百姓のこと、油カスみてえに人間扱えにしなかった士《さむれい》めら、今度こさ、眼に物ば見せてやっから、待って居れっ!(と昂奮して猛烈に大釜の中を掻廻しはじめる)
遊一 (これも無意識に銃身掃除をひどい速力でやり始めながら)おい、そいでも足の辺がガタガタ顫えているぞっ! 汁ば、こぼすな!
遊二 お前だってよ! こりゃ武者顫いだっ!
[#ここから3字下げ]
(遙か遠くの方でドーンと砲声。続いてパンパンパンと銃声。再び砲声。その銃砲声を聞いてチョッと静かになった屯所が再び騒がしくなりワーッワーッと喊声)
[#ここで字下げ終わり]
遊一 オッ! また、味方が追込まれて来たぞっ!
遊二 くそっ! やれっ! 勝手にしろ、汁なんか拵えて居れるかっ! (と棒を投出して右手へ走りかける。そこへ右手屯所からバラバラと走り出
前へ
次へ
全260ページ中121ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング