がこぼれる!
遊一 それでは、田丸様、藤田様、水木様、本田様なんどの大将達が信用ならねえとでもいうのか?
遊二 まだ貴様、からんでくるのか! 信用しねえぐれえなら、俺あすぐ山を下っていらあ。
遊一 それなら、默って上の人達のいうことを聞いていさえすればいいのだ。俺が猪の脳味噌なら、お前のもドン百姓の脳味噌だ。
遊二 アハハハハ、それよ。だからよ、上の人の命令通りに命を投げ出しているんだから、早く戦争をやらして貰いてえというているのだ。味噌汁なんどばかり掻き廻してはいたくねえというのよ。
遊一 俺だとて、二三日前からこの銃《つつ》の奴等を、もうこれで五度位ずつも掃除をしたて。たいがいいやにもなろうわえ!
遊二 そこへ行くと同じ遊隊でも抜刀隊はうらやましい。斬られた者も何十人かいるが、刀あ抜いて斬って廻れらあ。副隊長つき添い、真壁の仙太郎さ[#「さ」に傍点]なんどは、軍《いくさ》が始まってから、あっちこっちでもう十四人斬ったてよ。腕も立つし、度胸も太えし、俺達とは競べものにはならねえが、それにしても運のええお人よ。
遊一 そうだってのう。俺達も早く飛出して、腕かぎり根かぎり斬ったり射ったり
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