もお願いして、筑波党を攘夷の一番槍にさせてくださるように天長さまから御勅命が下るようにと申されたのだ。宍戸の松平の殿様も幕府に同じ事を頼んで下すったげな。今井さんから聞かされたことだから間違いないて。ところが、どれもこれも、通らねえ。何でも上の人の話を聞くと、通る筈がねえそうだ。うん。みすみす通らぬとわかっていることを何故するか、というのが、攘夷々々で江戸をギューギューいわしておいて、江戸が手を焼いている暇に世の中の立て直しをやらかしちまおうというのだそうな。その辺の具合は俺達にゃよくわからねえが、とにかくお前のいうように、俺達下々の者が安心して家業をはげめるご時世が来さえすればよいには違いないけれど、だからというて、そう一がいには行かぬものよ。
遊一 馬鹿をぬかせ。どうせが家業投げ出してここに駆けつけたからには命を投げ出しているんじゃぞ、俺だけじゃねえ、山にいる何百何千というご浪士達、百姓町人猟師がみんなそうだ。
遊二 あたぼうよ、わかりきっていら。ただ物事には裏があり、そのまた、裏まであるということよ。
遊一 フン、貴様命が惜しくなったのだろう。
遊二 ぶんなぐるぞっ! おっと、汁
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