ありませんか?
お妙 いいえ。……(何かをハッと悟って、急に青くなり、ガタガタ顫え出す)す、す、すると、あなた、父を、父を、き、斬る……?
今井 ちがう。それ程のことではない。しかしことは迫っているらしい。京都で薩摩の者達ともしきりに往来していられたという情報もあります。雄藩連合等の遠大なお考えがあるのかも知れません。われわれ若輩にはその辺よくわからない。筑波には筑波の見解があるのでしょう。よく知らんのです。……勝手に待たせて貰いますから、拙者におかまいなく、どうぞ。
お妙 はい。……しますと、父が見つかればどう……?
今井 党に取っては功労者です、無下にどうこうということもありますまい。それにどんなことなさったかもご本人からも聞かねばわからぬ、しかし場合に依っては功労は功労として、どんなものですか……これ以上知りません。(段六を見て)この仁は?
段六 へ、へい。
お妙 あの、それは、段六さんと申しまして、お百姓をなさる、私どもの世話をなさつて下すっています。……あの真壁の仙太郎さんの小さい時からの兄弟のような方です。
今井 おお、真壁の仙太郎君の?
段六 へい。……仙太公、あんた様ご
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