存じでえすか?
今井 あんな小気味のよい男は無い。大丈夫だ。ハハ。忙しくて暫く会わぬが、加多先輩の手で、たしか門前町下辺を固めている筈。
段六 へ! すると筑波におるんですか※[#感嘆符疑問符、1−8−78] 筑波の下で見かけたなんどという人がいたが、んじゃ噂は本当だったのじゃ。何てまあ、軍《いくさ》なんど、よせばいいに!
今井 会いたいのか? だが山はいま危いぞ。
お妙 私も仙太郎さんには色々お世話になっております。
段六 (長五郎のことをヒョイと思い出し、戸棚の方をキョロキョロ見ていたが、やにわに)嬢さま、おら、んじゃチョックラ行って来ますぞ。早くあのこといって……。軍なんど止めてここへ引戻してきますよ、嬢さま。それに(とむやみに慌てて上にあがって、戸棚の方へビクビクしながら近づいて、仙右衛門の位牌をさらって、持っていたフロシキに包んで懐中に入れ、その間もソソクサ歩いて土間に降りる)……一刻も……。(といきなり頬被りをして急いで外に行きかける)んじゃ、じき戻ってくるで、嬢さま!
今井 待て。ならぬ! 外へやることはならぬ! (という間に、段六は走って外へ出て行ってしまう)こら、止れ
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