お子はどうなさいますの?
長五 どうだと? そりゃかわいそうだが、母親も身寄りも別にねえ奴だ、無職の子に生まれ合せた因果だ、こうして連れて歩くまででござんすよ。
お妙 かわいそうに、気絶でもしたように眠りこけて……。仙太郎さんが見つかるまで、この子は私がお預りしましょう。いえ、他にも親のない子達が沢山おります。十一人の世話を焼くのも十二人の世話を焼くのも同じこと。
長五 え! それじゃこの子を……?
段六 (あわてて)と、と、嬢さま、そ、そ、そんな、また、だから俺がいわねえことじゃねえ。この上にまた子供ができれば、あんた様の命がねえのにさ。しかも仙太公を仇にするっていう子だあ。
長五 黙っていろい、土百姓! するてえと、お妙さん、そりゃ本気かね?
お妙 はい。いまさらいってもあなたにはおわかりになりますまいけれど、ヒョッとすれば、この子のお父さんは私ども一同のために命を落されたのかも知れぬと存じます。あなたさえ苦しくなくば、立派にお預りしたいと思います。
長五 ……さうか、よし面白え。ただの泥っ臭え田舎娘の言草たあ少し違うようだ。あらためて、じゃ、お預けしやしょう。その代り……。
お妙
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