会いてえ、人に訊ねたりして捜しているぐらいだ。全体……仙太公という男は因果な男だて。そうして仇だなんどつけねらわれるかと思えば、あれ程恋いこがれていた実の兄が殺されたのも知らねえで、何処をホッツキ歩いているのか。つまらねえバクチ打ちなどに……。
長五 恐ろしくベラベラ喋る野郎だ、もういい。おいお妙さん。この男のいうことあ定かね?
お妙 それに違いございませぬ。私もおっしゃるように甚伍左の娘、嘘は申しません。また、あなたがそうして仙太郎さんを追いかけて、その子のために仇をと思っているお心持もわかる積りです。嘘を言って何になりましょう。
長五 ……よし、信用しよう。じゃ俺あこれで出て行くから、もし今後、仙太がここにきたならば、くらやみの長五郎がこうこうだと、男なれば逃げかくれはするな、長五郎いくらふだんはズボラでも、性根までは腐っていねえ、お前にゃドスを掴んじゃかなわねえことあわかり切っていても、するだけのことあしてえからと、忘れねえでいってくだせえ。大きにおやかましう。(刀を納めて、戸の方へ出て行きかける)
お妙 あ、チョィト、長五郎さんとやら。
長五 なんですい……?
お妙 その背中の
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