仙太郎さんが見つかっても、必ずこの子をあなたのカセにはいたしません。
長五 恐れ入った。長五郎、一本、かぶとを脱ぎやした。じゃ、ま……(と帯をほどいて眠りこけている子供をお妙に渡しにかかる)
段六 大丈夫でがすか、嬢さま……?
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(お妙黙って子供を受け取る。それまで抱いていたお咲と滝三の二人を抱いたことになる。不意に、奥、間近の辺で――この屋敷内にある納屋とその周囲辺とも思われるところで――大勢の人々の悲鳴を混えた叫声。ワーッワーッ、ヒーッという声の中から「天狗だ!」「天狗党だ!」「天狗党が来たぞおっ!」「助けてえ!」「いいやお捕方だっ!」「人足狩りだ!」「天狗だ! 天狗だ! 天狗だっ」等の声々がハッキリ聞き取れる。人々の逃げまどっているらしい足音が右往左往する。
 三人ギックリして戸を見詰めて立つ。長五郎ツカツカと戸のところへ行き、細目に開けて外を覗く)
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長五 (ピッシャリ戸を締めて)いけねえ! 来やあがった! お妙さん、その子のことあ命にかけてお頼ん申したぜ。おっと! (と戸を開けて飛出して行こうと構えるが、既に人々の声と足音は奥か
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