愛している! 蹴られたっていい! 踏んづけられたってかまわない
いいや、踏んづけてくれ! ホントに踏んづけてくれ!
ね! ね! ねえ君! ヒー、ヒー!
シラリシラリと冷たく笑いながら白い眼をして睨んでいる女の足元で
お前はチギレチギレに、うわごとのように、身をふるわして言いながら
こうやって、こんなふうに(身をよじらして、キッスの雨のゼスチュア)こうして
よごれた女の足の先からだんだんにクルブシ、フクラハギ、ヒザ、フトモモとくちびるが
昇って行って山の傾斜を這いあがる
くすぐったいよう! バカあ!(身をもんでキッスされている女のゼスチュア)バカあ!
バカだねえ、くすぐったいたらさあ!(ベリリと腰のオダリスクの片方をやぶき捨て、片方のモモの円柱を斜めにグイとあげ、最下等の媚びと軽蔑とを混ぜて、自分のからだを男に投げ与えるゼスチュア。ゆかに倒れて鼻声を出す)
夜ふけの雨が窓を叩いて
天井で思わずミシリと言わしてもお前たちには聞こえない
私がのぞく節穴にいっぱいに、クローズアップにひろがって
組み合わされた四本の脚がギチギチギチと音なく動き
その間から、ダラリと舌を出したまま、ハッハッハ
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