誠実な顔をして進歩と人民民主主義を説き
清い家庭の良き夫、良き父として
人格高邁、微動だもせず以前と寸分違わぬ姿でいることだ
これは何だ? わからない。
わからないままに、私はますますお前の後をつけまわした
家から教室へ、教室から講堂へ、講堂から川岸のアパートへ、アパートから家へ、
グルグルと眼がまわり出したのは私の方だ
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(既にしばらく前から、言葉の調子はたたみこむように急速になって来ていたのが、このあたりから、益々速くなる。同時に、それにともなう表情とシカタも、あらわに大きく激しくなる。しかも言われている言葉と動作がズレて、随所でシンコペーションを起して、それが異様な感じになる)
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ねえ、頼むから、そんな薄情な事はいわないでくれ
この次ぎは五千円ぐらい持って来るから
いやいや、今度二冊ばかり本を出版するから
それが出れば四五万円はいるから
なんだったら、もっとたくさん持って来られる
ねえ! だから! 僕は君がホントに好きなんだ!
僕はこの胸を割って見せたい! 疑うならば、しめ殺してくれてもよ
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