き、額にあげた片腕の、わきの下のくぼみの黒さ。……間。……白い塑像は動かない。やがて、フッと片手を眼からおろす。泣いているかと思えたが、あげた顔はえんぜんと笑っている)
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私としたことが、ツイのぼせあがってしまいました
泣いたり笑ったりの合いの手を入れていたのでは
話のヒる時はございません
バタバタと、形容ぬきの電報式に申しましょう
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(酒をつぎ、カプッと一口に飲みほして)
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ほっ! ごめんあそばせ。
私は、南の国の小さな城下町の生れです。
裁判所につとめていた父を早く失い
旧藩士の家から出た母のもとで一人の兄といっしょに育ちました。
兄は、たいへんまじめな、きつい性質で
学生時代に左翼の運動に熱中し、
ケイサツにつかまって二年の刑を受けて、
出て来た時はスッカリ胸を悪くしていて
それから三年寝て暮した末に
戦争がはじまって間もなく死にました。
兄は私を、しんから、かわいがってくれました
それも普通のかわいがり方ではありませ
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